弁護士の小野智映子です。
離婚において調停をする意味には何があるのでしょうか?
繰り返して述べているように、離婚の場合、裁判所外の話し合いでうまくいかない場合(いわゆる協議離婚でカタがつかない場合)、すぐに裁判ができるわけではなく、調停を行うこととされています。
調停は、裁判所においての「話し合い」ですから、以前にも書いたように、必ずしも法的理論的な解決となるわけではありません。したがって、自分の中で離婚のうちどれが一番大事で譲れない条件なのか、どの条件では譲歩できるのか見極める必要が出てきます。
それなら、裁判所外での話し合いとかわらないのではないか?と思わる方もいるかもしれません。それに調停となると、裁判所に出頭するのはなんとなく気が引ける、平日でなければならない、期日が月1回程度しかない、といったデメリットと感じられることも多くあります。
それでも、私が実際に多くの離婚事件にかかわってきた感触でいえば、調停で離婚を求めるメリットは十二分にあると思います。ましてや、弁護士を付けないで、ご自分で話し合いをされる方はなおさらです。
それは、調停がいくら話し合いがベースとはいっても、裁判所が関与する以上やはり法的にみて公平であるかという大きな柱があるといえるからです。当事者はあまり意識しないかもしれませんが、はたからみていると、ご夫婦というのは事実上の力関係があり、どちらかがどちらかに気おされているということがよくあるうえ、当事者同士の話し合いであると、やはり、自分の主張を相手の意見も汲み取って譲りあうということがなかなかできず、結局なし崩しでどちらか一方に著しく有利な結論になることが多いといえます。そのようなときに調停であれば、一つの調停事件に必ず裁判官がついており、著しく法的公平を欠く結論を一方が望まない状態で押し付けられことを防ぐ方向で水先案内をしてくれます。弁護士をつけるということも公平な解決のための手段でありますが、調停という解決の方法をとることが公平な解決のための手段の一つになるのです。
また、調停は月1回しか期日がない、というのが悪い点のようにも思えますが、逆に1か月のうち1回その時間はご夫婦が自身の離婚問題についてのみ検討する時間を持つということになります。そして、調停は、調停委員という第三者に話を聞いてもらい、一つ一つ次はこれについて検討しましょうという形ですすめているし、記録ものこりますので、1回、1回話し合ったことを固めつつ、次に進むことになります。したがって、「この前、ああいったのに今度は違うことをいう」といったことが少なくなります。逆にいつでも話合えると思える協議離婚の方が、日々の生活に追われ、考えることが後回しになりがちになり、自分はきちんと早くすすめたくても、相手が回答をくれないということが生じえます。片方が離婚に乗り気でない場合などにはなおさらです。私の経験上も同時期に始めた事件が、協議よりも調停の方が最終的決着が早かったというケースがありました。
そして、なにより、調停の場合調停成立時に「調停調書」といってまとまった内容をきちんと文書化してくれますので、わざわざ別に協議離婚書を作成する必要がありません。しかも、調停調書は、養育費の支払いについて調書に記載されていれば、養育費の不払いがあったときに強制執行を行う債務名義ともなります。調書を作るのに別料金などもかかりません。
私としては、ご夫婦それぞれの意思はもちろんやはり公平に解決するということがとても大切であると思うので調停は是非利用すべき制度であると思っています。